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こんな本読みました の巻 ~25~

 百田尚樹作品は寓話である『カエルの楽園』と、エッセーである『大放言』ぐらいしか読んでませんでしたが、先日『海賊とよばれた男』に圧倒されて以来、立て続けに時代小説『影法師』を読み、さらに続いて、本当に今更ながら、こちらにたどり着きました。

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『永遠の0』
百田尚樹・著
2009 講談社文庫

 小説を読んで泣いたのは初めてです。いや、もう圧巻です。

 内容としては、祖父が実の祖父でない事を知った姉弟が、本当の祖父がどういう人だったのか興味を持ち、祖父を知る人たちを訪ねて、その生き様を聞くと言うものです。

 現代に軸足を置きながら、回想の過去へ何度も足を運ぶことで大東亜戦争の中で海軍航空隊として懸命に生きた祖父の人生のピースがひとつひとつはまっていき、最後に出た答えは、孫たちの人生すら変えていきました。

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 戦時中の事、軍の上層部がいかに愚かで無謀だったか、彼らが素晴らしい若者たちの命をいかに軽視したか、そして、南方での戦いがいかに過酷であったか、よくもまぁここまで詳細に、生々しく書けたものだと言う事に感動しました。

 軽薄な平和運動などを行っている左寄りの人が書いた本ならお馴染みのイデオロギーによる脚色かと思いますが、普段保守的な発言の多い著者だけに、戦禍の描写では痛切な戦争への憎しみがよりストレートに伝わってくる思いです。

 9年も前の本でいまさら感想を述べるのもあれですが、あんまりに心を揺さぶられたので書いてしまいました。

 
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こんな本読みました の巻 ~23~

 私は楠木正成と言う人物がとても好きです。それは、強いリーダーシップと男気を持ち、戦略的に相手を翻弄し、徒に相手の命は奪わず、徹頭徹尾自分の為でなく、公のために生きたからです。

 ところが楠木正成を、戦中は極端な軍国主義教育が過大に崇めて神格化し、その反動か、戦後は極端な反日教育がその存在を封印してしまいました。
 でも、本当は、ただただ私利私欲ではなく、義のために、公のために生きた一人の「悪党」だったので、今こそもう一度、冷静に評価し直すべきだと思うのです。そんな時に出会ったのがこの本です。
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『教科書が教えない楠木正成』
産経新聞取材班
2018 産経新聞出版

 楠木正成が活躍するのは、執権北条高時が鎌倉幕府で圧政を敷く14世紀前半。幕府を倒したい大塔宮護良親王と後醍醐天皇の呼びかけで、幕府に不満を持つ武士や悪党(幕府の支配下にない集団)が反旗を翻します。
 楠木正成率いる軍1000人が籠城する千早城を取り囲むのは数十万の幕府軍。圧倒的な劣勢の中、実に三ヶ月も寄せ手を撃退。その間に、鎌倉で足利尊氏や新田義貞と言った有力御家人が幕府に反旗を翻して、遂に幕府は滅びるわけです。

 本書では、楠木正成由来の場所を訪ねた取材班が、関係者から様々な言い伝えなどを聞き、確かに今も各地で尊敬されている楠木正成や、それと同じぐらい紙幅を費やして、息子の正行(まさつら)のエピソードが書かれています。

 残念ながら、戦後、楠木正成はすっかり歴史の闇に葬られ、いまだにNHK大河ドラマの主役にもならず、小学館の偉人の本の並びにもありません。スティーブ・ジョブズなんかよりはるかに偉人なのですが…。
 とにかく自分が大事、命が大事、と言う現代に、それよりももっと大事なことのために生きた人たちの物語を、知っていただければと思います。
 

こんな本読みました の巻 ~22~

 矢作直樹先生の著書は、初めて読みました。以前から命に対する考え方や、この国に対する考え方など、共感することが非常に多い方だと思っておりました。
 命の現場にみえる救急に携わる医師でありながら、魂や霊性に関する事も非常に重要視してみえる方です。

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『ご縁とお役目 臨床医が考える魂と肉体の磨き方』
矢作直樹・著
2014 ワニブックスPLUS新書

 私も以前から精神世界の事と言うのはとても関心があるので、取り立てて真新しい内容ではなかったのですが、いかにして内面を磨いていくか、物事をどうやって捉えていけばいいか、改めてこれからの生き方のヒントになる事がたくさん書いてあり、ぜひおすすめしたい一冊です。

 本の中でも本筋から少し外れる形で触れられていましたが、明日は終戦の日と言う事で、それに関しても矢作先生のお話は非常に的を射ていたので、私見を交えて書かせていただきます。

 戦後、GHQが占領下で、”有色人種が二度と白人様に逆らわないようにするため”の洗脳を行う中で、日本人に綿密に着実に植え付けたのが、とにかく日本が悪かったのだと言う「贖罪意識」です。
もともと「和」を大切にする日本人が戦争をせざるを得なかった後悔とも親和したのか、この洗脳は予想外に成功し、戦後、日本人は日本人である事を否定して70年を過ぎました。
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 アメリカから合理的な価値観物質主義を無作為に無分別に輸入するあまり、戦前まで持っていた日本人としての大切な心をどんどん失っていったようです。お金さえもうかればいい、自分さえ良ければいい。他人より上へ、他人より稼ぐ。持ったものが勝ち、多い人が豊か。

 果たして、本当にそうなのでしょうか。
 団塊世代を中心とするメディアが牽引してきた歪んだ「戦後」に、懐疑的になる若い人たちがじわじわと増えてきたように思います。

 メディアが理想だとして持ち上げたグローバリズムが明らかに轢音を上げ始めたり、自然を支配できると言う過信も天変地異によるしっぺ返しを受けている今、改めて、この本が伝えるように、戦後失ってしまった日本人の精神的な豊かさや人と人の繋がりを見直す時期に来ているのでは、と私も思います。


 

こんな本読みました の巻 ~21~

 こう暑くては、本を読もうという気力すら蒸発してしまいます。本というのは決して時間をかけてじっくり読めば頭に入るわけではなく、ある意味で一気に流して読んでしまう方が案外理解しやすいような気がします。数日空くと、記憶力の悪い私は前段の内容をすっかり忘れてしまいます。

 今回は、戦国時代から江戸時代にかけての本を読んでみました。テーマは、「世界史の中の日本」です。大航海時代、スペイン・ポルトガルが、キリスト教布教の名のもとに夥しい数の原住民の大虐殺と略奪を繰り広げ、世界を二分するという傲慢な取り決めまでしていた時代。
 日本にも当然その触手は伸びました。ザビエルとか、あの辺りです。そんな中、日本がいかにこれを防ぎえたかが、この本の主題です。

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 『戦国日本と大航海時代 秀吉・家康・政宗の外交戦略』
平川新・著
2018 中央新書

 何年か前にNHK大河で真田幸村が取り上げられていましたが、小日向文世さんが演じた秀吉が晩年、特に秀忠が生まれた辺りから徐々に心理的に不安定になり、狂気を帯びていく様をとても好演してみえたのを覚えています。
 そんな晩年の秀吉の狂気の一つとも言われる「朝鮮出兵」の意味を、秀吉が朝鮮を足掛かりに明を支配下に置いて、侵攻するスペインやポルトガルを牽制しようとする狙いがあったのだとこの本では解説していました。

 出兵自体は秀吉の死もあってとん挫しますが、結果的には欧州国家は日本を侮れない「帝国」という位置づけで警戒し、統一政権による巨大な軍事力を保有する日本に対して、東南アジアや南米などで行った武力侵略は無理だという判断に至ったそうです。

 歴史というのは決して一面で判断してはいけないなと、改めて思いました。そして、世界地図を俯瞰した中での日本の歴史を学ぶ必要も、感じました。

 

こんな本読みました の巻 ~20~

 当たり前だと思って見過ごしていた事に、ふと何かのきっかけでそこに焦点を当ててみると、存外知らなかった事の多さに気づきます。「知らないで死ぬより、知って死んだ方がいい」と、死を待つ獄中でも学び続けた吉田松陰。そんな境地に一歩でも近づきたいものです。

 今回は、日常的に接している「単位」に関する本を読みました。

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『新しい1キログラムの測り方』
臼田孝・著
2018 講談社

タイトルを見て息子が一言「1kgなんて、測るの簡単やん。」と。
「どうやって?」と聞くと、「秤で測ればいいやん。」と。ほほう。
「それなら、そもそもその秤を作る時に何を基準に1kgを決めたんやろ。」と聞くと、「うーん。わからん。」と。

 そうなんです、1kgって何をもって1kgを決めているか、実は、案外知らないのです。
 いや、まぁ、ご存知ならすみません。 

 ”世界の某所に、ピッタリ1kgの基準の金属の塊があって厳重に保管されていて、それを元に各国が1kgの基準を合わせている。”…と言う冗談のような話が、実は正解だったりします。意外に非近代的。

 ところが、その1kgの塊(原器と言う)、わずかな摩耗も起こさないように三重に鍵まで付けて大切に保管されていたにも関わらず、百数十年経過するうちになんと5ng(ナノグラム)も変化してしまったのです。ちなみに5ngとは、1億分の5g(指紋1個の重さ)。
 ごくごくわずかな差でもズレてきたら世界中の基準がずれる事になってしまい、大変なのです。

 そこで、絶対的な1kgの基準を作ろうではないかと奮闘する世界中の賢い人たちの奮闘の物語が、この本には書かれています。そして、「プランク定数」「アボガドロ数」と言う値が極めて高い精度で求められたことにより、ついに来年から1kgをより正確に規定する事となったのです。

 また、質量以外の単位に関しても、いかに正確にそれを表現するか、同様に奮闘したこれまでの歴史も知ることができます。文明とは、正確に”はかる”ことから生まれるのだ、と思いました。