こんな本読みました の巻 その拾七

 今回は、「時計」に関する本をご紹介したいと思います。何気なく部屋にかかっている時計。一度、時計と目を合わせてみてください。彼らは黙々と時を刻んでいます。
 しかし、不思議ではないでしょうか。時刻は、いったいどうやって生まれているのでしょうか。「神のつくったもの」であった「時」を、人が手に入れるまでの先人たちの努力が詰まった一冊です。

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『時計の科学 人と時間の5000年の歴史』
織田一朗・著
2017 講談社

 日時計、水時計、砂時計といった古来の時計が生まれたころから、驚くべきことに、人類は「地平線から太陽が見え始めて完全に姿を現すまでの時間(約2分)を720倍すると1日である」事を知っていたのです。あまたの単位の中で、時計だけが12進法なのも、自然から生み出した理由があるのです。

 本書では、5000年に及ぶ時計の歴史を繙いて、現代、そしてこれからの展望にも筆が及んでいます。あたりまえの”1秒”が絶対のものではなく、これすら変化しているという話はとても面白いです。
 現在の電波時計の精度は「3000万年に1秒以内の誤差」だそうですが(※)、今後目指している光格子時計の精度は、なんとなんと「3000億年に1秒の誤差」だそうです。
 正確な時刻を手に入れる事が出来たことで、相対性理論による主観的な時間の差も、測定できるようになってきたとの事(10の-18乗秒レベルの精度が必要だそうです)。 

※訂正:高精度なセシウム原子時計は「3000万年に1秒以内の誤差」ですが、現在運用されている電波時計の制度は「30万年に1秒以内の誤差」でした。えらい違いでした。訂正いたします。

 時間とは何か。時計という切り口でこれを考えるのに、とても面白い一冊でした。
 ちなみに、本の表紙の時計は、かのマリー・アントワネットが贅の限りを尽くして作らせた時計、その名も「マリー・アントワネット」で、価格にしたら3億は下らないそうです…。

 
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こんな本読みました の巻 その拾六

 私は、本屋に行くのが好きです。実際にページをめくってみないとその本の持つ味がわからない気がするので、できればAmaさんや楽さんではなく、本屋で買うのが理想です。

 今回ご紹介するのは、「江戸」に関する本です。 著者は「明治維新という過ち」で知られる原田伊織氏です。

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『日本人が知らされてこなかった「江戸」』
原田伊織・著
2018 SB出版

 「明治維新」に関して学校で習って漠然と知っている知識は、「尊王攘夷」を掲げる維新志士が、ついに討幕を果たし、新政府を設立したと言う一連の改革だろうと思います。

 ただ、歴史と言うのは勝ったものによって”作られる”のは世の常で、明治を築いた薩摩・長州の”偉人たち”が、日本の西洋化・近代化を正当化するにあたって、「江戸」と言う時代がいかに野蛮で未開で非合理であったかを刷り込んで言った結果が、現在の教育だと言うのです。
 ”江戸時代は支配者たる武士が、庶民から搾取する時代”である様な一般的な時代劇のイメージも、史実とは全く異なるようです。

 江戸時代は、想像以上に効率的文明的で、かつ「持続可能な(サスティナブル)社会」であり、現代人こそ見習うべき点が大きいのだということを、改めて感じました。
 また、非常に感銘を受けたのは、よく言われる”自然との共生”という言葉こそ、自然と人間を同等に見た極めて傲慢な考え方であると言う指摘です。
 江戸時代の日本人は、自然とは抗えないもので、人間も自然の一部であると言う価値観の下で、災害に畏れながらも自然の恵みを尊重し、生きてきたと言います。
 
 物質的な事を求め続け、そして行き詰っている現代人こそ、江戸時代の先輩の生き方に学ぶところがあるのでは。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の、「日本が西洋化して合理的な生き方まで身に着けた時、日本人は”日本人によく似た西洋人”になってしまうだろう」と言う指摘をもう一度、思い出さねばならないように感じます。

 

こんな本読みました の巻 その拾伍

 久々に、読んだ本のご紹介です。

 本は毎月せいぜい3~4冊とは言え一応読むのですが、巷間で話題の本!とか、○○賞受賞!とか書いてある本は一切読む気がないと言うひねくれ者なので、ここに書けるような本がないのです。

 さて、久々に書くのは、こちらです!
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『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』
福岡伸一・著
2017 小学館新書

 「生命とは何か」などと仰々しく見出しがありますが、決して難しくないように書かれているので、読んでいて「へぇ」「なるほど」がたくさんあります。

 生命とは何か。37兆個の細胞でできているに過ぎない人間は、決して部品が組み合わさなったプラモデルではない。では、命はどこにあるのか。これは以前読んだ哲学的な本ともリンクする命題です。哲学と科学が、同じことを突き詰めているのは面白いです。

 命とは、エントロピー増大と言う自明の流れに逆らいながら、新陳代謝を繰り返す事によって平衡を保つ営みそのもの。命とは、流れそのもの。ちょっとした感動すら覚える内容でした。

 蛇足ですが、食物の代謝に関する話のこぼれ話で、コラーゲンは完全に分解されて吸収されるので、コラーゲンとして肌やら関節やらに届くことはありえない、とありました。
 健康食品ってのは一体何なのでしょうね。また、コラーゲンは肌に塗っても届きません。
 
 秋の夜長に、ぜひとも読んでいただきたい一冊です。

 

こんな本読みました の巻 その拾参

 私事ですが、桑名の星川にある「三洋堂書店」さんによく行きます。百田尚樹氏の新著『今こそ、韓国に謝ろう!』が店頭に平積みになっているなど、個人的に選書にとても好感が持てるのです。
 
 どうしても売ってない本はAmaさんでポチりますが、”なるべく本屋さんで買おう”キャンペーンを自分で展開中です。
 前置きが長くなりましたが、三洋堂さんをぶらついた時に目に留まってしまい、衝動買いしてしまった本をご紹介します。

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『論理的思考力を鍛える33の思考実験』
北村良子・著
2017 彩図社

 思考実験と言うのは、実際に実験を行うのではなく、様々な条件下の状況を想定し、頭の中でその思考を楽しむものです。

 例えば、『モンティ・ホール問題』がありますが、これは、3つの選択肢の中から1ひとつの当たりを引くのですが、ひとつを選んだ時点で、答えを知っている出題者側から、選ばなかった2つのうちハズレのほうを除いた後、「最初の選択肢と残りのひとつ、選択を変えますか?」と質問されます。さて、変えた方が当たりやすいかどうか、と言う問題です。
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どう思われますか?

最初に選んだ時点でどれを選んでも確率は当然1/3です。
その後何が起ころうが、その確率は変動しないのでは?と思われる方が多いかと思います。
ところが実はこの場合、変えた方が当たる確率が2倍に上がるんです。さて、なぜでしょう…。

 こんな風な数学的な確率の問題から、『トロッコ問題』のような、”見過ごして5人の犠牲をとるか手を加えて別の1人の犠牲にとどめるかの選択”など、「うーん」とうなる心理的な思考実験もあります。

 とてもわかりやすく解説がしてあり、1~2時間でサクッと読めてしまうので、興味があればぜひ手に取ってみてください。
 

こんな本読みました の巻 その拾弐

 「最も尊敬する歴史上の人物は?」と問われたら、皆様なんと答えますか?
 歴史上の偉人というのは、後世の都合によって課題に評価されていたり、その逆もまた然り。
 
 「最も尊敬する人物」と問われて私が即答する、『楠木正成』も、後世の(GHQの)都合で存在が軽視されている一人かと思います。と言う事で、本日ご紹介するのはこちらです。
 

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『真説 楠木正成の生涯』
家村和幸・著
2017 宝島社新書

 楠木正成と聞いて、名前ぐらい聞いた事あるなぁ程度の人が殆どかと思います。…念のため、「正成」は「まさしげ」と読みます。

 楠木正成は河内(大阪)の悪党(※”悪い人”という意味ではなく幕府の管轄でない領主のこと)でした。戦っては古今の兵法に通じて様々な戦略を駆使して幕府の大軍勢を圧倒し、統治しては自らを律し、領民の声を最も重んじて公のための政治を行った、智・勇・仁を兼ね備えたリーダーでした。

 北条高時が私利私欲で支配する鎌倉幕府を倒すべく、正成は後醍醐天皇の勅を受けて決起しました。千早城の籠城戦などは伝説的です。足利尊氏新田義貞といった御家人も倒幕に加わり、ついに幕府は滅びます。しかし、その後反旗を翻した足利尊氏と「湊川の戦い」に臨んで破れ、自害するに至りました。

 自分のためでなく、常に公のため。楠木正成を知ることは、日本人としての生き方を知ることだと思います。これほどの偉人なのに、どこを探しても子供向けの伝記が全くないのが残念です…。
 ぜひ、読んでみてください。